【3】教育プログラムの全体像

【3】教育プログラムの全体像

(1)全体像の説明

図表2がダイブツ塾の教育プログラムの全体像である。まず縦軸に注目すると2年間の正規コース、終了後第3年学年以降のマスター・コースがある。マスター・コースは定められたカリキュラムはなく、各自が自由に学べる。そしていつでも自由に卒塾できる。 次に横軸に注目すると、「カリキュラム」と「テーマ研究」がある。これがダイブツ塾の2つの柱になっている。また色分けした部分に注目すると、まず緑の部分が、テーマ研究発表会である。年に2回開催される。ここでは各々のテーマの進み具合など発表を聞き、 アドバイスをしたり、厳しい質問で追及したりと文字通りの切磋琢磨が行われる。ダイブツ塾では試験は行われない。その代わり、このテーマ研究発表会が塾生の成長を図る大きな節目ということになる。

(2)カリキュラム

次に、カリキュラムであるが、黄色、赤色、青色の3色で区分された、「経営者研究」、 「経営理念研究」、「経営戦略研究」の3つからなる。 第1に黄色の「経営者研究」 とは松下幸之助、本田宗一郎、井深大、豊田喜一郎、稲盛和夫など偉大な経営者の人物研究を通じ、その生い立ち、経営理念、信念・哲学、戦略、リーダーシップなどを学び、経営者としての自己イメージ(なりたい姿)の形成を行う。第2の赤色の「経営 理念研究」とは、近江商人や二宮尊徳、石田梅岩など日本の経営理念の源流をさかのぼり、またさらに日本の経営理念を根底から形づくる儒教・仏教・神道の基礎を学ぶことで、幅広くより深く考え独自の信念・哲学の形成を行う。第3の青色の「経営戦略研究」とは、塾長が長年構築してきた「改革の極意」という改革力の醸成にはじまり、 またMBAコースの各種戦略論、戦略の伝統的テキストである孫子の兵法、また信長・秀吉・家康の天下取りの戦略について掘り下げ、戦略立案力を形成する。

(3)経営者研究の解説

このダイブツ塾では塾長のダイブツ先生が松下幸之助の直系の直弟子であり、 ダイブツ塾の塾生は正当な継承者と呼んでもいいだろう。 このため、この塾では第1学年の「松下幸之助1」、第2学年の「松下幸之助2」と松下幸之助を徹底して掘り下げる。これによって、考え方の軸を一本通すことが出来る。その上で経営上の判断はこの軸に照らして行うことが出来るようになる。一つの価値判断の尺度、 原理原則となる。そして松下幸之助以外にも11人の偉人といわれる名経営者を深く掘り下げる。これによって、「優れた経営者とはどんなものか」というイメージが 塾生それぞれの頭の中に形成される。そしてやがてそれを目指そうという志の 原型につながる。 そのことで各自の目指すべき道、キャリア・イメージがよりクリアになってくる。さらに経営者のケーススディーを通じて様々なエピソードから、偉大な経営者の意思決定のパターンが頭に入ってくる。「そういえば、本田宗一郎は こんな時こうしたな」とか、「井深大はこうしたな」というような、発想のヒントとなるデータベースが頭に出来上がることになる。すると、実際の経営で、多くの偉大な経営者の発想がヒントとしてパッと頭に浮かぶようになり、いざという時大きな助けとなってくれるのである。

(4)経営理念研究の解説

経営理念とは、その会社の理念だけでなく、経営者自身の信念・哲学、夢、 志などを融合したものであり、この良し悪しが最終的にその企業の経営成果を決める。特にこの塾の目指すチェンジ・リーダーには必ずその人独自の強固な経営理念が必要となる。なぜなら、チェンジつまり革新するには未知の領域に直面したり、逆境や苦境を乗り越えねばならず、そのために非常に強い胆力が必要となるからである。そこでこのダイブツ塾の教育プログラムではこの経営理念研究には一番力を入れている。単に一般的な会社の理念の研究はいうに及ばず、「日本の経営理念の源流」とそのルーツにまでどんどんとさかのぼってい く。そして一番の根底にある、「儒教、仏教、神道」にまで徹底的な深堀をする。 「なぜ経営理念にここまでこだわるのか?」それは歴史的成り立ちがわかれば、経営理念の本質がつかめるからである。本質まで理解出来れば自信をもって根本まで改革に踏み込むことが出来る。チェンジ・リーダーはいかなる場面でもおじけづいてひるむことなく、立ち向かう勇気を出すための「経営理念研究」 が最も重要になる。

(5)経営戦略研究の解説

どんなに優れた思想や理念があっても、実際のビジネスの現場は戦場である。 勝つか負けるかの弱肉強食の世界。それゆえ勝つための道筋、方策、智恵が何 より大切になる。それがこの経営戦略である。「勝つか負けるか」の戦場を勝ち抜くためには、勝つための考え方、つまり戦略的思考という考え方の根本から作り込まなければならない。つまり具体的に勝つためのアイデアを色々と出すことも大切だが、戦いには勝つための定石となる考え方が存在する。つまり、その考え 方をしっかりと身に着けておけば、戦いの勝率は一気に上がる。これが経営戦略である。チェンジ・リーダーには、危機的状況の「改革力」と、平時の意思決定である「経営戦略力」の二つが必要だ。そのため、第1学年では「経営改革の極意」という危機的状況下の戦略力を、そして第2学年では、「経営戦略力」を深く攻め込む。


第二章「教育内容」


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