トップ / 改革理論 /
変革期におけるトップマネジメントの本質
第3節 21世紀の日本
【21世紀の日本】(インタビュー内容)
現在、日本を率いておられるリーダーのお一人として、『理想とすべき21世紀の日本はどうあるべきだ』とお考えですか?
またそのためには、どうすべきだとお考えですか?
21世紀の日本について考える場合、今回の調査のなかには、回答者のほとんどの人が口にされた、幾つかの共通するキーワードが存在した事は極めて興味深いことであった。
まず、日本という国家の長期戦略ならびに長期展望を考えるに当たって、日本という国家のもつファンダメンダルズ(基礎的条件)を考えなくてはならない、ほとんどの方が口を揃えたようにおっしゃったお言葉は、『日本は、面積も狭く、少資源の国である。』ということである。このことは、21世紀の日本においても変わることのない条件であろう。しかしながら、第二次大戦後の我が国は、こうした条件にもめげず、専ら『経済の復興と、民主化、平等化』を目標に進んできたわけであり、今日にいたっては『世界第二の経済大国』にまで到達したわけである、物質的に豊かになり、いろいろな面において、世界でも最も恵まれた『幸わせな国』となった事は、まず高く評価すべきである。
しかし、これからの日本を考えた場合、どうしてもまず現状の間題点に立って、考えねぱならないであろう。今回の調査で目を見張ることは、『国際化』ということをほとんど総ての人が、真っ先に答えられたということであろう。つまり、先程も述べたように、少資源・小面積という条件をかかえた、我が国が生き残る唯一の方法は、海外から原材料を輸入し、それを加工することによって成り立つ加工貿易立国の道でしかない。とするならぱ、どうしても貿易依存度も高く、そのために『国際的協調』方針は避けて通ることは出来まい。
いや、ただそれだけではない。今や、世界第二の経済大国になった以上、『世界のなかの日本』、つまり世界的な政治・経済・軍事関係を無視しては、もはや一国のことが考えられない。いやそれどころか、この経済力に見合う役割、リーダーシップというものも世界中から期待されているのである。これは、『世界の中の日本』ではなく、『世界のための日本』ということにほかならない。
しかし現状として、はたして日本がここまで国際化がなされているかということになると大きな問題が残る、たしかに以前と比べれぱ、世界との交流も多くなり、我々がいわゆる"外人"を目にする機会も日常茶飯になってきて、以前のように彼らを恐れるようなことも少なくなっている。また十分とは言えないまでも、言語の上でも国際化は進んでいるといえよう。しかし、こうした『ことぱの国際化』、『目の国際化』のほかに、『こころの国際化』という点で、私たち日本人ははたして国際化したといえるだろうか?相手の立場に立って思いやる心や、他人に依存しあまえることなく、自律的で自分達の意志を言い表すような考えかたをもっているだろうか?こうした『こころの国際化』は、日本人が本当に国際化するうえで、必要となることであろう。
次に、国内的な課題について見た場合は、どうだろうか?日本にとって、『少ない資源・小さな国土』と同様な条件として、『単一民族国家』ということと、『2千年以上に渡る長い歴史をもった国』ということがいえる。
しかし、『第二次世界大戦における敗戦』によって、国土は荒廃し、それまでの長い歴史の流れとは、ある意味で断層が出来てしまったということがいえよう。そのため、じっくりと日本独自の文化を醸成することができなかった。
また、戦後の日本は経済一辺倒で『心の豊かさ』を見失ってしまったということが言われる。
またいかに世界第二の経済大国とはいえ、これはあくまでも蓄積としての『ストックムではなく、その場限りの流れである『フロー』にほかならない。そのため本当の意味での経済力があるかというと、はなはだ疑問である。とくにヨーロッパ諸国にみられるような重厚な文化の香りや、社会資本の充実が日本では欠如しているといえる。
これに加え、日本が世界に貢献しているものは何か、ということになると確かに製品の輸出によって物質的豊かさに貢献しているとはいえても、いわゆる思想や文化などの『ソフト』の輸出ということになると、極めて貢献度は低い。このことは、戦後日本が急激にのし上がった、いわぱ『成り上がり国家』であって、本当の底力や実力を未だ持ちえないことを示していよう。
日本は、『世界で唯一の被爆国』であり、国民の総てが真に平和を望み、維持しようという心をもっている。日本が輸出できる、いや輸出しなけれぱならない『ソフト』は、『平和先進国』として自らそのモデル国となり、混乱を極める国際社会を秩序づける、真に有効な新しい『平和のための思想』ではなかろうか。
|