トップ / 改革理論 /
変革期におけるトップマネジメントの本質
第4節 予備調査
4-1 調査目的
予備調査を行うにあたって、その実施目的としたところは、以下の点である。まず独自のフレームーワークの作成のために、前節まで主に理論構成をおこなってきたわけであるが、しかし本研究において作られた理論モデルが必ずしも実証的に現実の現象を説明可能であるとは限らない。そこで
(1)要因の選定
実際の経営の現場で意思決定をおこなう際、外部環境・内部条件・企業特性のうち、いかなる要因が大きな影響を持つのであろうか。またトツプ・マネジントのなかには具体的にいかなる要因が現実に存在するのか。予備調査において、これら要因の選定を行うことが第一の目的である。
(2)モデルの実証的妥当性の検証
本研究では、3つの経営要因‐トップのアクションとの因果関係を明らかにしようというものであるが、そこには本当になんらかの因果関係が存在するのだろうか、というこのモデルを適用することが妥当か否かのチェクをおこなうことが第二の目的である。
以上の2点が予備調査の目的とするところである。
4-2 調査方法
(1)予備調査の実施(日時・場所・対象者)
@日経セミナー『新カリスマ的リーダーシップの実践』
(日時)昭和60年7月9日
(場所)経団連ホール
(協力)日本経済新聞社、マネジメント・システムズ社
(対象者)講演会参加者(企業経営管理者)150名
ADr.ブルー特別講演
(日時)昭和60年7月10日
(場所)青学会館
(協力)マネジメント・システムズ社
(対象者)講演会参加者(一流企業経営管理者)33名
Bアンケート集計結果
(アンケート方法)自由回答形式
(アンケート回収数)117件[回答率]63.9%
(有効回答数)33件[有効回答率]28.2%
判別不能・未記入・一部記入は無効とした。
(2)アンケート内容
以下の内容で、自由回答法によってアンケートの実施をおこなった。なお自由回答法のため、有効回答率は低いが具体的な回答が得られるため、今回の調査の目的には最も適当であると判断した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※ ※
※ ※
※ ※
※<アンケート> ※
※ [I]最近、あなたが直接なさった会社の方針にかかわる重 ※
※ 要な意思決定はなんですか?また、それはいつ頃でしたか? ※
※ できるだけ具体的に、お答えください。 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ ・・・・・・約ヶ月前 ※
※ ※
※ [U][I]でお書きになった、あなたの意思決定はどんな ※
※ な外部環境の影響がきっかけとなったか一主なものから2つ程 ※
※ お書きください。 ※
※ @ ※
※ A ※
※ ※
※ [皿]あなたの意思決定を成功させるため一貴社のどのよう ※
※ な経営体質を活かしたか、お答えください。 ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ ※
※ ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
4-3 調査結果
@『意思決定について』
この結果をみると、組織運営戦略・組織構造戦略など『人』にかんする問題が大きなウェイトを占めているほか、経営基本方針・多角化戦略といつた企業全体の方向性を決定するものに意思決定の中心があることがわかる。本研究では、この予備調査の結果を踏まえたうえ、『トップのアクシヨン』としては上記の[1]から[10]までの戦略をとりあげることにする。そして[1]から[4]までを、企業の成長のベクトルという意味で『全体的方向性』とし、[5]および[6]を、どれだけ自社内でまかない、どれだけ社外に依存するかといった企業外部との関係性を表すということで『社外との関係』とする。
また通常、製品の開発にあたっては意思決定者の開発ポリシーならびに他社との競争・消費者のニーズが関与することから[7]・[8]を『製品開発意識』と名付ける。そして組織の運営、ならびにその構造の戦略に対しては、[9]・[10]を『組織への対応』として体系的に整理する。
*なお本予備調査結果は、自由回答形式によって答えられたものを、内容ごとに、まとめ直したものである。また複数回答のものは一つの答えを一件として計算してある。
A『外部環境について』
この結果からわかることは、意思決定にさいして主に影響のあるのは先に取り上げた市場環境であるところの、景気変動・企業間競争・技術革新・消費者二一ズである。この場合、政治や他の環境要因は直接、意思決定に影響を与えることが極めて少ないことが明らかである。この結果をもとに、本研究おいて、外部環境とは[1]から[4]までの4つをとりあげる。
B『企業の経営体質について』
この結果をみると、組織力・人材力が意思決定にたいして非常に大きな影響を与えていることがよくわかる。本研究では、この結果を踏まえて[1]から[7]までを企業の内部条件として、また[9]・[10]に企業規模を加え、企業特性とした。
Cモデルの実証的妥当性の検証
前項までにおいて各環境の要因の選定は行い得たわけであるが、残るもう一つの目的は、モデルの実証的妥当性の検証、つまり本モデルのあげた各環境‐トップのアクションに、なんらかの因果関係が存在するか否かを明らかにすることであった。これに関しては各サンプルごとに意思決定と外部環境ならびに経営体質の関係を調べてみると、主に『組織戦略‐人材力・組織力』のあいだ、および『多角化戦略‐製品力・資本力』の間に大きな因果関係が見られ、また外部環境についてはほぼ一様に影響があることから、本モデルを適用することは妥当であると判断でき、モデルの実証的妥当性はあるといえる。
|