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第6章 コーディネータの役割

6-1 従来の会議の問題点

 通常の改革案であれば、何ヵ月もかかって出来上がるものである。大きな課題であれば、それだけに話し合いにかかる時間も長くなるもの。ところが、あまり時間をかけ過ぎていたのでは、一番重要な改革の実施が遅くなり、手遅れになってしまうかもしれない。しかも、一人でも多くの人たちの衆知を集めるためには、「いかにして議論の生産性をあげるか?」ということが重要になる。

 ところが、日ごろ私たちが行なっている会議というのが、非常に生産性が悪い。工場の生産ラインの生産性については、目の色を変えて追求する割に、最も肝心なコミュニケーションの生産性となると、あまり議論もされていないのが現実である。例えば、以下にあげたものが、現在の会議によく見られる問題点である。

【現在の会議の問題点】

@    上位の人たちの意見や事務局の報告を、一方的に聞くだけの会議。

A    大勢の参加者の中で、ただ利害が対立する者同士だけが意見を戦わせ、周りは白けている会議。

B    観念的な話や『話の話』が多く、具体的な話になかなか入っていかない会議。

C    ゴルフや麻雀の話などの余談や雑談が多くて、なかなか核論にいかない会議。

D    報告会なのか交流会なのか、目的がはっきりしない会議。

E    参加者の知識のレベルや問題の認識が異なり、一部の人間だけしか発言できない会議。

 まさに『会して議せず、議して決せず、決して行わず。』といった状態にあるといえる。そこで、本章で紹介するシステムズ・アプローチによる討議では、密度の濃い生産性の高い会議を実現するために、改革手法を熟知し、衆知を集めるための行動科学の知識とテクニックを身に付けたコーディネーターを参加させることによって、こうした問題を解決していくのである。

6-2 問題解決の情報処理プロセス

(1)問題解決の情報処理プロセス

  会議の生産性を考える前に、まず我々が問題解決を行う場合、大脳整理学上、どのような頭の働きをおこなっているのか考えて観よう。上記の図のように、まず問題となる情報を感覚器官で知覚し、それがどういうものなのかその意味を認識し、またそのことが自分にとって都合がいい事かどうか判断し、最後にそれに対してどのように対応するか知恵を出すわけである。

 このプロセスは、一人の人間の頭の中で行われる情報処理のプロセスであるが、集団で討議し問題解決をはかる場合、このプロセスを周りのメンバーとのコミュニケーションによって行っている。文字や数字、あるいは映像や音声など様々な種類の情報のやり取り、つまり相互のコミュニケーションによって問題解決が進められるのである。

(2)言葉の内包と外延 

 このコミュニケーションをいかに効果的に行うかを考える上で、我々が日常使っている「言葉」というものがどんなものか、ここでその概念を整理し直してみよう。次の図のように「言葉」には、国語辞典に書いてあるような、ある「言葉」が持つ表面的な意味である「外延」と、その言葉に対して持っている、個々人のイメージを表す「内包」という二つが存在することを表わしている。

図 車というものは?(内包と外延)

 例えば、図のように「車」という言葉を例に取ると、国語辞典に書いてある意味(外延)は、「車輪が回ることによって進む仕掛けになっている器械」ということになる。しかし、人間が普通の会話で「車」という言葉を理解するときには、各自の頭の中で「車」というものに対して持っている「かっこいい」とか「早い」とか「快適」とかのイメージや価値観といった「内包」に照らし合わせて理解しているのである。

        図  男女の擦れ違い(車とは?)

 互いに会話する相手同志が、大体同じような立場や文化水準、環境の中にいるもの同士であれば、この言葉の「内包」に大差なく、したがってごくスムーズにコミュニケートすることができる。ところが、この「言葉」の「内包」の違いによって、意見の対立が起きたり、誤解が起こったり、相互に空回りすることがある。次の図はその一例である。

 ここでは、男性と女性がどこか旅行へ行くのにどんな方法がいいのか、と話し合っているとしよう。男性が「車」にしようというのに対して、女性の方は反対しているのである。そこでナゼお互いに意見が違うのか、この二人の頭の中を分解してみたのがこの図である。

この場合、男性も女性も言葉の「外延」ということからすれば同じ認識である。そして、その「意味」ということからしても、同じように「ガソリンを使って走る自動車」という認識で一致しているのである。

 ところが、この二人が持っている「車」に対するイメージのレベルになると、まったく異なっているのがわかる。さらに、「車」という言葉を聞いたときに受ける良い悪いの判断、つまり価値観のレベルまでいくと、さらに正反対のものとなっていることが明らかである。

 そして、なぜ二人の間にこれほどまでの隔たりが生じたのかを考えると、二人の育った環境や住んでいる環境が異なったために、「車」という目に見える具体的な分かり易い「言葉」でも、コミュニケーションが成立しないといったことが起こるのである。よく「既成概念で物事をとらえたり、フィルターをかけて他人の話を聞くために」誤解や錯覚が生じて話がかみあわない場合は良く見受けられるが、目に見えない経営上の問題や戦略的な問題など、より抽象的な言葉になればこの食い違いはより大きなものとなる。

 このように同じ言葉を使って議論していても、内包が異なっていては、意思の疎通は出来ない。そこで必要になるのが、それぞれの頭の中のレベルをすり合せていく必要があるのである。本書で述べるコーディネーターは、議論における各レベルのすり合せを効果的にスムーズに行っていくことが最も重要な役割である。お互いが力をあわせて問題解決の知恵を出そうとすれば、まずお互いの言葉を正しく知覚し、正しく認識し、正しく判断するという前提条件がある。

 このため、知覚のベースとなる「言葉のすり合せ」、認識のベースとなる「イメージのすり合せ」、そして判断のベースとなる「価値観のすり合せ」という3つのすり合せのプロセスが必要となる。この3つのすり合せによって、コミュニケーションが円滑に行われ効果的な会議が行われるポイントがある。それでは、次にどのように、この3つのすり合せを行っていくかについて述べてみよう。

6-3 SCAN(発散)―FOCUS(収束)―ACT(決断実行)

 アメリカの組織論学者のフランク・バーンズは、組織を改革するためのコミュニケーションのプロセスを研究し理論化した。これは、組織がより強固な体質の組織へ生まれ変わる時の討議のプロセスについて表したものです。それによると、組織を改革する時のコミュニケーション(改革討議など)は、SCAN―FOCUS―ACTの一連のプロセスを循環しながら行われるというものである。

        図 SCAN―FOCUS―ACT 

 まずSCAN(発散)とは、組織の人間から問題について出来るだけ多くのアイデアを集める段階である。これにはメンバーの意見をどんどんと聞いて、どういうものがあるかを知る狙いがある。情報量はどんどんと増えていくかわりに、話題やトピックの間口が広がってしまい、焦点はなかなか絞れなくなる。ブレーン・ストーミングなどは代表例である。

 次にFOCUS(収束)とは、たくさん出されたアイデアの中から、何か問題の核心なのかという焦点を絞っていく段階である。これはKJ法のようにアイデアいくつかのグループにくくったり、あるいはそれぞれのトピック毎に重要性や緊急度などでウエイトづけし焦点を絞っていく段階である。

 そしてACT(決断実行)とは、アイデアを評価し、最終的にどれにするか選択し、実行する段階である。重要なことは、「問題が何か?(問題把握)」、「何が原因か?(原因分析)」、「どのように解決するか?(問題解決案作成)」、「どの解決案を選ぶか?(解決案の選択評価)」など3章で述べた問題解決の各々のプロセス毎に、順番にこのSCANFOCUSACTを繰り返しながら、プロセスを切って進めていくのである。

 よく見受けられる悪い例として、「この問題の原因はなにか?」を議論しているときに、解決案のアイデアがひらめいたり、推進上の課題が頭に浮かんだりして他人の言葉をさえぎってステップを先に飛ばしてしまう場合がある。なにかひらめいたときにはノートにメモしておき、その場は全体のプロセス毎の進行をベースに進める。

6-4 デボノ博士の6色ハット

          図 デボノ博士の6色ハット

 この図は「デボノ博士の6色ハット」という考え方である。

この論理は、集団で討議を行う時に、図のような6種類の役割を果たす人間をからみあうことで、討議がどんどんと進化していき、よりよい結論に導かれるというものである。そして討議は、3つのステージによってどんどんと進んでいくわけです。

 全体が3つのステージから成り立つ。まず問題の状況や大変さを怒りや喜びを主観的に表明する赤色ハット。次に事実やデータに基づいて客観的に述べる白色ハット。この二人の発言によって、より正確できめ細かい現状把握が可能となる。次のステージでは、「それではどうしたらいいだろうか?」というアイデアが出され、それに対して賛否が話し合われる。まず物事を前向きにとらえる肯定的な黄色ハット。これに対して様々な反対意見を述べる否定的な黒色ハット

 通常の会議は、この主観―客観、肯定―否定という対立する概念の軸の間を、行ったり来たりしてなかなか進展が見られない。そして結果的に創造的な問題解決が行われるのではなく、「力の強い者、声の大きな者、上位の者」が議論の勝者となったり、あるいは多数派工作に成功したものが優勢となったり、あるいは対立する意見の折衷案を作り妥協して終わるケースが大半である。現実のプロジェクトの場合、ある一定の期限の中で結論を出さねばならず時間の制約があり、どうしても結論をだすことを急いで安易な解決案に妥協してしまうのである。特に、何度トライしても解決が出来ない積年の課題のようなものはこの類が多い。

 この状況を打破し、より創造的な問題解決案を出すための役割をするのが、次の緑色ハットと青色ハットの役割である。まず緑色ハットの人は、議論の流れをじっと聞きながら、色々視点を変えながら対立する考えをまとめ、止揚(アウフヘーベン)し、飛躍させる着原点や発想を提供する人である。この人の発言がいかされると議論はより高くて前向きな段階へ一団向上することができる。そして青色ハットの人は、議論のコーディネーターとしての流れを整理し、異なるアイデアを組み合わせ、メンバーを勇気づけながら、より高い次元へ順番にリードしていく役割を持つ人である。日常の会議では専任のコーディネーターをおくことは少ないかもしれないが、創造的なプロジェクトチームの場合、大抵プロジェクトリーダーが緑色ハット、青色ハットの役割を担っているか、そういう発想や役割が出来る人が必ずメンバーの中に存在するものである。

 特にポイントとなるのが、青色ハットのコーディネーターの役割である。特に注意をようするのは、感情的に発言する赤色ハットの人や、否定的な意見を言う赤色ハットの人は会議では集団の和を乱すとして排斥されがちであるが、彼等の発言の「要は何をいわんとするか」という内包をつかみ出し、彼等の意見も進んで議論の中に組み入れていくことである。赤色ハットの発言の中には、組織上表に出てこない本音が隠されていたり、本題の深刻さを必死に伝えようとする場合が多い。また、否定的な意見の中には、他のメンバーが気付かない別の視点が隠れていたり、推進上の課題や配慮するポイントが隠されていて、それを取り込むことによってより成功の確率が高まる。また緑色ハットのアイデアは、普通議論の脇役的な人からポッと出され、すぐにメンバーに認知されずアイデアが殺されるケースが多いので、コーディネーターはそれが出された段階で見過ごすことなく、「なかなかいいアイデアですね。」と勇気づけ育てる役割がある。

65 巻き込み参画

 「事務局が現場の声を聞かず、机の上のプランだけで動かそうとして組織からの反発を招き結果としてうまくいかない」というようなプロジェクトの失敗例がある。問題の解決案を作るまでの前工程を焦るあまり、組織メンバーの理解と参画が得られず問題解決案の実施という後工程でつまづくケースである。トップダウンだけではうまく進まず、日本的な根回しが重要な由縁でもある。

 かつてある社会心理学者行った調査で、ある婦人会に対して町の清掃を訴えるビラを作って配るといったときに、市当局が作って一方的に配った場合約3%の参加率だったのが、婦人会自らが問題を調査し皆が参加してビラを作り配ったところ参加率が約40%であったという調査があったそうである。確かに「ビラを作って配る」だけが目的であれば、誰かが問題解決案を作り少ない人数で実行したほうが、時間がかからず手っ取り早い。しかし、「町をきれいにする」のが本来の目的ならばはたしてどうだろうか。さらに上記の調査の後日談として、後者の婦人会全員参加でビラを配ったほうは、以後個々人が町を綺麗にしたいという意識が向上し「ごみが少なくなった」ということである。

 コーディネーターにとって重要な事は、単に問題解決の前工程のみならず実施し、効果をだすという後工程もにらみながら、関係する人達を順番に巻き込んでいくことである。現状分析や実態把握の最初の段階から問題解決の全工程をにらんでヒアリング調査の最初の段階から改革のための仲間を増やしていく必要がある。このことは単に直面する問題の解決のみに止まらず、そこに参画した人達に、主体者意識を芽生えさせ、高い志と目標を共有し、いかなる状況にも対応できる自立的で柔軟な、最強の問題解決チームをつくる組織変革(OT:Organizational Transformation)にもつながる。

66 アンカーリンクとグループシンク

 次に紹介するのはアンカーリンクと呼ばれる現象で、討議チームの中に影響力の強い組織の上位者と下位者が一緒にいると、上位者の発言が下位者の発言に影響を及ぼし、より有効なアイデアが出てこないというものである。次の左図はある社会心理学者の調査したものであるが、会議の中における組織上の上位者と下位者で発言量が、どの程度変化するか示したものである。これによれば、上位の者が圧倒的に発言量が多いことが分かる。

 よく会議の席上偉い人が一人で演説していて、他のメンバーは萎縮して何も言えず、会議が終わった後に小声で本音をもらしているなどというシーンを見かけるがこの典型であろう。さらに発言の量だけでなく、右図のように上位者の発言は船のイカリ(アンカー)のように重く影響力も大きい。このため下位者の発言はアンカーにむすびついたリンクのように、上位者の発言に対してYesかNoかという一定の範囲での発言しか出てこないという現象がおこる。

             図 アンカーリンク

これをアンカーリンク現象とよぶが、コーディネーターとしては最も配慮が必要である。というのは、このリンクの外のアイデアこそ創造的問題解決にとって重要なものであってもこの現象のために出てこない恐れがあるからである。

 特に日本の組織社会のように、村社会的な内向き意識が強い組織では、メンバーの心の中に、「集団の秩序を重んじ結論に向かうのを妨げてはいけないので、少し違う意見があるが発言を控えよう」というような心理状況もあって、なかなか自由なアイデアが出てこない場合が多い。このように集団の意見に自分の意見を合わせようとするのをグループシンクと呼ぶ。

 これらの現象に対する対策は以下のようなものである。

 (1)インフォーマルグループの活用

   公式な会議でなくインフォーマルなグループで本音を事前に聞き出しておく。当日の会議では、下位者が言いにくければ、コーディネーターから発言する。事実の裏付けがあると一層効果的。

 (2)自由な会議の雰囲気を作り出す

   コーディネーターは、出来るかぎり明るく自由な雰囲気を作り出す。具体的には話し方や態度などを明るく、時には冗談やユーモアも交えるなど。また必要であれば社外の会議室を使ったり、服装も自由にするなども効果的。

 (3)会議のルールを設定

   「本音での発言」、「メンバーは対等」、「相手の発言を批判しない」など7章で詳述するルールを決め、違反者には注意を行う。

 (4)席順にも工夫を

   会議での席順も、なるべく黒板に向かって近いほうに下位者がすわり、視界の中に入らないようにする。

 (5)発言は下位者から

   上位者の発言が下位者に影響を与えたくないときは、下位者から順次発言させて相互の影響を排除する

 (6)紙に書かせる

   各自のアイデアを紙に書かせるのも効果的。

67 フォロー・ペース・リード

 フランク・バーンズは、コーディネーターとしての意識の持ち方、リードの仕方の極意として、FOLLOW(従う)ー PACE(同期をとる)ー LEAD(リードする)という理論を紹介している。これはちょうど小学校の時の共鳴の実験を思い出すと分かりやすい。U字型の音さをたたくと音をたてて振動する。そしてもう一方の音さに近づけて、周波数が一致すると自然ともう一方の音さも振動をはじめ音を出し始める。お互い離れていて距離があっても振動が空気を伝わるのである。

 これと同じようにコーディネーターもメンバーをリードしようとした場合、いきなりリードしようとしてもなかなかメンバーはついてこない。よく初心者でコーディネーターに指名されたりするとその責任感のあまり、強引にリードしてしまい、メンバーからの不協和音が出て空回りするケースが多い。これは、双方の気持ちが共鳴し自然にリードできるまで待たなかったためである。そのためには、ゆっくり近づいていってFOLLOW)、共振するポイントをつかむ事が重要なのである。そこで同期がとれればPACE)、あとは力も強引さも必要なく、こちらが少しだけ動いてやればLEAD)あとは向こう側で自然とその方向に動き出しているのである。

 これについて道元禅師は、「正法眼蔵」の中で以下のような面白い例え話をされている。ある人が、川を泳いでいる魚を捕ろうとした。最初は、川岸から手を伸ばして魚を捕ろうと思い、どんなに手を突っ込んでも魚は素早く手から逃れ、全く捕れなかった。ところが、今度は服を脱いで川の中に入り、川の中で冷たいのを我慢してじっとしていた。そして川の温度と体温が一致してから、おもむろに魚を捕ろうとすると、これが面白いように捕れるということであった。

 難しいのは「川の冷たさに我慢する」というFOLLOWである。誰しも人間であれば、自分の考えや意見を持っているし、またそれが正しいと一般に思っている。また好嫌の感情などがあって、なかなか素直に相手の立場に立って聞けないものである。以下には、この具体的にコーディネートを行っていく順にFOLLOW-PACE-LEADの具体的展開方法を列挙してみよう。

 【 FOLLOW-PACE-LEADの具体的展開方法 】

(1) 自分の頭の中の先入観や、フィルターをはずして素直になる。

(2) 会った瞬間から相手をよく観察し、どんな人物か想像してみる。

(3) 仮に目の前のメンバーが生理的に最も嫌いな人間であっても、いったん自分を殺し、まずは相手と同化することを考える。

(4) 始めは挨拶や雑談から入り気持ちを和らげる

(5) 相手の置かれた立場や生い立ちなどを頭にイメージし自分をその立場に置き、相手になりきって考えてみる。

(6) 相手の言葉を単に表面的な情報としてだけ聞くのではなく、何を相手は訴えようとしているのか、何を言わんとしているのかに注意する

(7) 知らないことが出てきたら恥ずかしがらない。その場で「それはどういうことですか?」と聞いてみる。

(8) 相手の言葉について「良い悪い、の判断」はしない。まず言わんとすることが理解することでとどめる。

(9) 相手の目をみて、理解出来たら頷きながら聞く。

(10)    常に相手の言葉は全体の中のどのことをいっているのか?どういう視点から発言しているのか?を自分の頭の中の地図の中で照合しながら聞く。

(11)    ある程度、理解出来たら「あなたの言いたいことは要するに***ということですか?」と要約して確認をとってみる。

(12)    相手も頷き返してきたり、表情がやわらかく変わってくれば徐々に同期がとれてきた証拠。

(13)    一通り話にひと区切りついたら、今度はこちらから「今お話しいただいたのは×××についてですが、それでは次は■■■についてはどうですか?」とか「大変よくわかりました(※)。それでは反対に●●●の観点ではどうですか?」と新しい方向を向けてリードしてみる。

(※)ここでいう「良く分かりました。」というのは、相手の意見に賛成するとか同調するという意味ではない。あくまで「いわんとしていることが理解出来ましたよ。」ということである。

 コーディネーターとして向上するためには、生まれついての資質もさることながら、まず数多くの実践経験を積み、その中から自らコツをつかみ自信を深めていくことである。そして一番重要なのは、他のメンバーから信頼されコーディネーターとして「認知されるか」ということ。そのためには「如何に人の話を聞くか」ということが基本である。「話し上手は聞き上手」なのである。

 コーディネーターに求められる心構えは、「一人一人の意見はちょうどジグソーパズルのピースのようなもの。パズルを完成させるためには、必死に皆の頭の中から引き出し組み合わせる必要がある。」、「相手は何を言わんとしているのか。何かいいアイデアを言っているのではないか?別の視点や盲点を指摘してくれているのではないか?」というようなただひたすら必死になって素直に聞くことに徹する姿勢がきわめて重要になってくる。そのうえで、「自分の意見を通したい」とか「みんなに認めてほしい」とか「あいつには負けたくない」という私心を取り払い、「よりよい結論に導くのが自分の役割」という自己犠牲の精神が核となる。

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