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2-7 メタネットの会議の内容

 私がメタネットを初めて使い始めた次の日、一通の電子メールが届いていた。デビ・マクグリファンさんという婦人運動をやっている女性の方からである。
 「HAJIMEMASITE YOUKOSO METANET HE」始めはなんのことだか分からなかったが、よく読むとローマ字なのである。「はじめまして。ようこそメタネットヘ」すかさず返事を送って何故日本語を知っているのか、聞いてみると、日本で3年間生活したことがあり、英語の先生をしていたということである。なるほどと思ったが、それにしても使い初めて2日目の見ず知らずの人間、それも遠く目本から来た人間にメールをくれるとはなんと親切な人なのかと思ったものであるが、ただそれがその後気が付したのであるが、デビさんだげでなく、電子会議でやりとりする人たち皆が大変親切であり、アットホームなのである。
 ある人など私の英語を「こうしたらもっといい表現だよ」と一々添削して送り返してくれた人がいるかと思えば、今度バーティーをやって上げるから」と電子メールで招待状が来てびっくりしたこともあった。とにかく自由でアットホームな雰囲気なのである。
 それでは、メタネットの上で交わされる会話、電子会議の内容はどうであろうか?下の表は、メタネットの会議室の内容の主な抜粋である。

表 メタネット会議内容(抜粋)

テーマ 内容
ネットワークの条件 組織問題を中心に「人間関係」「技術の利用」などいかなる条件が優れたネットワーク組織の為に必要か。
財政赤字問題 下院議員のスタッフによる財政赤字建て直しのための政策立案を、会員の意見を持ち寄り議論する。
難民を救え 難民救済活動の停滞を解消するための会議
大統領比較政策ディベイト 88年大統領選挙の各候補者ごとに政策を比較検討し、アメリカを立て直すために誰が相応しいかという討論。
アメリカは立直るか? ニューヨーク株式市場のパニックに端を発し、米国の経済再建をテーマに、経済問題の大激論。
日米貿易摩擦問題 日米関係が専門の大学教授の主催で始めた日米共同の電子会議。日本側参加者はTWICSというネットを使用。
21世紀の教育のあり方

ボストンで行われた「21世紀教育シンポジウム」参加者による現地からの報告に基づく討論。

参加型民主主義の実践 電子会議やニューメディアを用いて、市民の政治参加を図るための方法を模索。
コンピュータ文盲の問題 情報化社会が進む中で、コンピュータが使えない人間がますます時代の流れ、社会そのものから阻害されていくのではないかという討論

 


 実は、このメタネットのメソバーの大半は、パソコン通信を始める以前にパソコンを全く使うことすら出来なかった素人の集まりばかりだということである。つまり「パソコンは技術屋が使うものである」という偏見を、実際彼らが持っていたかいないかは、定かではないが、しかし、この会議には難解な技術論が飛び交うものでないことは、明らかである。
 しかし、驚くべきことは、使い始めた会員のほとんどが、パソコン通信を大変便利な道具として、自ら稜極的に使用しているということである。そこには機械に対する低抗感は感じられない。
 なぜだろうか?私はある会員に聞いてみた。こういう答えが返ってきたのである。「確かにパソコンは使うが、中で話している内容は別段パソコンとは関係ない話題が多く、社会的な問題や自分が尊門としている話題が多い。だから内容に関しては、私達は専門家だし、またメタネットでしか得られない専門的な情報も豊富にあるので、パソコン通信は最高の道具です」
 彼の答えからは、確かにバソコンに対する低抗はあっても、内容に関して強い興味と関心があるために、その壁を乗り越えられたということになろう。
 もともとバソコン通信といっても、中身は何もない器にすぎないし、その器に内容を充たしていくのは、会員個々であって、会員の質そのものが情報の価値、ネットワークの価値を規定してしまうのかも知れない。
 その意味から、むしろパソコンに低抗感を持っていた、各分野の専門家の人たちの方がパソコン通信に向いていたのかもしれない。

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