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2-5 メタシステムズ者の設立の経緯

 何故この企業がこれほどまでに、組織の問題にこだわるのか? 自ら進んで、時代の先端を担う組織改革に取り組むのか?彼らの目指すネットワーク組織とは?
 これらの疑問を解決するためには、フランク社長のバックポーンを知る必要がある。このような経営哲学の背景には、フランク・バーンズ社長の独特な経歴が大きく影響しているからである。
 長年アメリカ陸軍に務めた彼は、陸軍大佐まで昇り、その後国防総省ベンタゴンの特殊プロジェクト、デルタフォースのリーダーとして招塒を受けた。このプロジェクトはペトナム戦争によって痛手を受けたアメリカ軍隊の再建をかけて、約350名の研究員を集めた、大変有名なプロジェクトでもある。
 彼らは、最新のシステム理論や、自然破壊、人間の意識の転換、あるいは近代文明社会の行き詰まり、文明的パラダイムの転換等、単にアメリカだけでなく、人類全体がかかえている大きな問題という視点からアメリカ軍隊の建てなおし、アメリカの再建を考えていった。
 ちょうどその頃、やはりケストラーのホロン、ワトソンの生命潮流というような本が巷であふれてた頃でもあった。もはや西洋文明、合理主義だけでは解決の糸口は見つからないと考えた彼らは、東洋思想、特に仏教や禅の思想に深く傾倒していく。
 そしてもう一つ、彼らプロジェクト・メンバーは、ペンタゴンで公式に行う仕事の他に、集まったメンバーが独自の思想を寄せあい、プライベイトに研究を進めるという2本立てで望んだのであった。この私的な研究のメンバーたちは、多くの発想と考えを闘わせやがて一つの考え方に収束していく。
 そして彼らは、その成果を一冊の文書として残す。「進化への戦術(Evolutiona「y Tactics)」。ここでは、彼らは自分たちを地球部隊(Ea「th Battalion)と称して、単に体力や戦闘技量だけを持った兵士から全人格的な「魂」を持った兵士の養成こそ重要であり、その遂行こそ地球部隊の役目であるという認識を持っていたのである。そしてメンバーのほとんどが、それを単に軍隊組織だけでなく、あらゆる組織を念頭において理論構築を行ってきた。それこそが西洋合理主義に裏付けされた組織の限界を打ち破る方法だと強く信じて。
 このことは、会社組織に置き換えれば、単なる兵隊としての社員から、全人格的な社員の養成こそが、本当に組織を鉄壁のものにするということになろう。単なる組織の歯車として働くのではなく、使命感を持ち、魂を持った個々の結集こそ最強の企業組織を作り上げるのだということである。
 「進化への戦術」のなかには大きく6つのテーマが定められている。「価値観の変換」、「個人の意識の進化」、「革新的なチームワーク」、「魂を持った兵士」、「地球共同体」そして「進化への資源」という6つである。
 彼らは、システム論をべ一スに東洋思想をも包含する学際的な研究プロジェクトを進めた。彼らの目標は、人類全体が共通の価観と目標を持つ共同体に変革していくことであり、このことを「進化」という名前で呼んだのである。
 そして、彼らの取り組みは、単なる理論だけに終わらない、実践的な処方箋を示した。このことから生まれたのが、以下の2つの柱から成るOT(O「ganizational T「ansfo「mation)という組織変革のための実践理論であった。

 (1)組織レベルの進化

 フランク・バーンズ社長によれば、組織は主に4つのレベルを経て進化発展する。まだ第一の段階では、過去の結果に縛られ、環境に左右されながら、罰則主義の強制的なリーダーシップを行うバラバラな組織(F「agmented)の段階。第二に、現在の生産性に追われチーム・プレーを主体とし、教育的なリーダーシップを行う封建的な組織(Hie「atchy)の段階。第三に、未来に向かっての目標を掲げ、組織としての戦略に重点を置き、前向きな目標管理によるリーダーシップを行うマトリクス型の組織(Mat「ix)の段階。最後に、共通の価値観をべ一スに、より高い理想とさらなる発展を目指して、互いの夢を共有した情熟的なリーダーシップによるネットワーク型の組織(Netwo「k)の段階である。組織はこうした4つの段階を経て進化発展していくという考え方である。
 そして、この組織の進化にあっては、リーダーシップ、モチベーション、価値観構造、計画など様々な諸要素がからみあっており、中でも組織構造を支える大きな要因はコミュニケーションの方法だというのである。

 (2)組織内部のコミュニケーションの役割

 こうした組織のレベルを、より上のレベルヘと発展させるためには、組織内部のコミュニケーションの役割が極めて大きい。これには組織の人間があるテーマに対して互いの意見や考え方を集め(SCAN)、そこから共通の意識や明確な計画を導きだし(FOCUS)、実際の行動をおこす(ACT)という一連のステッブがある。
 こうした3つのステップを円滑に運営し、しかもそこから全員に共通する価値観や目標を見つけだし、「衆知を集める」という過程をとおして組織がレベルアップするというわけである。

 フランク・バーンズはこの考えに立ち、ペンタゴン内部でパソコン通信(中でもとりわけ電子会議)を導入して、組織変革の実験を試み、大きな成功を修めた。その後、彼は軍隊のみならず、政治・経営など様々な社会の分野において、この理論を実践し、実際に社会を変革していくために、電子会議という「新しい武器」を用いたMDGという会社を設立したわけである。
 こうした現代の危機的状況を前にして、高い理想に燃えたデルタフォースのメンバーたちのチームワークは極めて強固なものであった。実はこの時のメンバーが、今のメタネットの中核を支えているのである。

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