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2-2 メタネットでの研修

 研修の初日は、ちょっとした災難から始まった。アメリカではよく飛行機の到着が遅れるのであるが、カリフォルニアからワシントソD.C.へ飛んだ私の飛行機もご多分に漏れず、6時間も遅れた。しかも空港についたのは、夜中の2時。どこのホテルも開いておらず、しかたなく飛行場で夜を明かして、次の日の朝、直接オフィスに向かったわけである。 そしてオフィスについて、ようやくのことで「メタシステムズ」のオフィスを見付けたときは内心ほっと一息ついた。到着時間は朝の7時半「ちょっと早いかな」とも思ったが、「その内誰か来るんだろうな」と思って待っていたが、待てど暮らせど一向に誰もやって来ない。 前の晩、寝ていなかった疲れから、オフィスの前でしゃがんで待っていたが、しかし待つこと2時間。だれも来ないのである。「一体どうなっているんだ。日本ほどではないにしろ、アメリカでも、ちゃんと9時になれば仕事を始めると聞いていたんだが」と想いながら待っていると、10時少し前になって、オフィスの人間らしい2人の女性が、ようやくやってきたのである。
 勢い込んで自己紹介を言うと、大変な歓迎を受けオフィスの中に案内された。この女性のうち、一人はリサ・カールソン、アメリカのパソコン通信の世界でも1、2に有名な女性で、そしてもう一人は、私が来る3ヵ月ほど前からいる研究生でジル・スモール。彼女はカリフォルニア大学のサソディエゴ校で、コミュニケーション学を学ぶ大学院の学生であった。
 オフィスに案内された私は、物珍しそうに辺りをぐるりと見渡した。広いオフィスの中には、コンピュータ3台が縁の方にちょこんと置いてあるだけで、あとは大の大人が3人ぐらいは横になって眠れそうな大きなソファー、そしてニューヨークの芸術家の町、ソーホーで見かけそうな前衛的な絵画や置物が所狭しと並べられ、何か情報産業のオフィスというよりは、芸術家のアトリエといった様子であった。 そして先程のジルから続いて出た言葉にびっくりした。「2時間も待ってたの?御免なさい。でもね。。。」と言って、こっそりと耳打ちしてくれた。「私もね、最初は驚いたんだけれどね、ここではあなたのように背広を着る必要もないし、出勤時間もね、決まってないのよ」 研修生として3ヵ月先輩の彼女は、率直なこの会社の実態を教えてくれたのである。このオフィスの服装や出勤時間が大変自由だというのは、(後に説明することになるが)研修を行っていって、2・3ヵ月して初めて本当の意味が分かって来たのである。

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